~老舗の後味~
昨日の園遊会の話の続きです。
街を歩くなかで、いかにも「老舗」な呉服店があった。
敷居が高そうでとても気軽に入れる雰囲気ではない。
でもスタンプラリーの指定店だったので、それを口実に遠慮気味に戸を引いた。
するとそこには、70代後半だろうか、白髪を奇麗にまとめて凛とした佇まいの女将がいらした。
「はいどうぞ~。」と優しい頬笑みを向けてくださり、少しホッとする。
そして娘を見て、「あら、上手に着せたわね。」と始まり、
「草履は子供の健康に良いのよ。」とか、
「女の子は奇麗な着物を着せてもらったことを、ずっと覚えているのよ。」
「大切にしてもらってる。と思えるの。」などと色々とお話しをしてくださる。
スタンプだけの客なのに、そこには「おもてなしの心」が溢れていた。
私は、“なにか記念に買おうかな。”という気持ちになり、
「娘の足袋が少し小さいので、合うサイズはありますか?」と尋ねた。
女将さんはすぐに2足を出してきて、包装袋から出して試し履きをしてくれた。
「あら、立派な足ね。あなた、大きくなれるわよ。」と娘に話しかけながら。
娘の足は計ると16.5cmで、靴は18cmを履いている。
それなのに、幅広&甲高なので、足袋は19~20cmがぴったりだった!
「履かせてもらえて良かったです。」と私が言うと、「ほほほ。」と女将さん。
¥700の買い物で店を出ると、
女将さんは店の外まで出て、長いこと見送ってくださった。
近年はネットショッピングが盛んになり、私も店頭で買い物をする機会は激減した。
ネットの方が値段が安い、比べやすい、手軽。なのは間違いない。
でもこうして、お店のおもてなしを受けながらプロのアドバイスを聞いて買うのも、
品物によっては大切だし、楽しいものだな。としみじみ思った。
女将さんは娘に足袋を履かせながら、私が着物のサイズを直した「腰上げ」「肩上げ」を見て、
「あら、自分でやったの?良く出来てるわね!工賃って結構するのよ。素晴らしいじゃない。」と褒めてくださった。
お商売のプロ中のプロである。お世辞なのはよくわかっている。
でも、私はとても嬉しかった。
買った足袋は白無地でどこにでも売っている物だけれど、
「この女将さんから買えて嬉しい。」と思った。
この後味が、老舗を守っているのだろう。